江草乗の「大人の物欲写真日記」

江草乗のプライベートな日常日記です。

あなたは私が好きでしたか?

大学の二回生の夏、私は北海道を自転車で旅行していた。ただ、札幌での一日は、その春に九州で知り合った二つ年上の、北海道教育大に通っていた女性Y子さんとのデートにあてた。彼女は札幌や小樽を案内してくれて、夜はススキノの居酒屋に連れて行ってくれた。そこで私は「彼女いるの?」と訊かれ、友人のようにつきあってる女性はいると答えた。するとY子さんは「結婚するの?」と訊く。そんなこと考えたこともなかったので「わからない」と答えると、「結婚しないのにつきあってるの?」とからまれた。20歳にもならない自分は結婚なんて考えたこともなかったのだ。

 礼文島に渡るために夜行の急行に乗る私を、Y子さんは札幌駅のホームで見送ってくれた。そのとき、いつまでも手を振ってくれていたことを覚えている。もう豆粒のように小さくなっても、でも手を振っていてくれたのだ。私はなんだかせつなくなった。
 20日近くの旅を終えて、もう一度札幌に戻ってきた私は、Y子さんに再び夕食をごちそうになった。帰り際におみやげをもらった。

 北海道に渡るたびに必ず私はY子さんと逢った。手紙もたくさん交換した。Y子さんは教員採用試験を北海道で受けるようにかなり熱心に勧めてくれた。でも、教員になるのが第一志望じゃなかった私は、大阪府しか受けなかった。大学を卒業後中学の先生となっていた彼女には、いつのまにか同じ教員をしている恋人ができた。手紙にはいつも、その恋人がいかに分からず屋で馬鹿かという愚痴と、「あなたならそんなことないよね」というジョークが記されていた。私が教師になって3年後くらいだっただろうか。彼女は「来年に結婚します」と手紙に記し、それ以後ふっつりと連絡を絶った。それからどうしてるのかはわからない。

 もしも自分が北海道の採用試験を受けていたら、おそらく彼女とつきあうようになっていたような気がする。それはほぼ確信に近い。

思い出の中の彼女に私はつい問いかけたくなる。
もしかしてあなたはあの頃、私のことが好きでしたか?