緑の日々(その4)
初めての方は必ずその1(12/17の日記)からお読みください。
翌朝、私はなんとラブホからそのまま出勤し、運良く同僚や生徒に見つかることもなかった。中間試験なので11時にはもう自由の身になって、学校の近くでMと待ち合わせて、それから京都までクルマを走らせた。
昨夜ついに二人は出会ってから2年近く経過してから男女の仲になった。それはお世辞にも祝福された状況とは言えなかった。これからどんなふうに二人の関係を築いていけばいいのか、おそらくどちらにもわかっていなかったのだ。
「やらなかったことによる後悔」と「やってしまったことからくる後悔」となら
迷わず後者を選ぶという人もいるだろう。この2種類の後悔を比べたらいったいどちらを選ぶべきなのか。
Mを抱いたにせよ、抱かなかったにせよ、自分にはこのどちらかの後悔を選ぶしかなかったのだが、後者を選んでしまったことは、自分にとって果たしてベストの選択だったのだろうか。
あるいは、自分が決心して行ったことである以上、決して後悔しないと強く誓えばよかったのか。それは今でもわからない。
京都駅で秋田に帰るために特急「日本海」に乗り込む時、Mは言った。
「センセイ、1年間だけ待って。あと1年間Kが戻ってこなかったらわたしその時はセンセイのお嫁さんになる。絶対に。約束だよ。」
帰国して入院中のKからMにハガキが届いたのはその1カ月後だった。その後でMから私に届けられた手紙にはこう書いてあった。
「センセイ、わたし、もうどうしたらいいかわからない。」