江草乗の「大人の物欲写真日記」

江草乗のプライベートな日常日記です。

父と暮らせば5

 最近、父は飴玉を舐めるようになった。リビングのテーブルの所にたくさんの黒糖飴やカンロ飴、味覚糖の飴などいろんな飴を買って用意してるのだが、それをせっせと食べている。おかげでタバコの本数がかなり減った。父は「一日あたり一箱は減った」と言っている。タバコを吸うためにリビングを出る回数も減って、リビングのテレビの前にいる時間が長くなった。
 父が甘いもの好きであることには前から、というかずっと以前から気づいていた。というのはいくつかのお菓子の中で「どれを食べる?」と選ばせれば、父は必ず甘いものを選んだし、砂糖の塊のようなお菓子がかなり好みであったから。そうそう、私がまだ生まれる前の若い頃は、父は一時和菓子を作る職人だったんだ。だから砂糖にも独特のこだわりがあって、最近のはおいしくないと言っていた。
 「宿木」という半生菓子がある。これが父の大のお気に入りなんだが、近所ではまともなものは売っていない。ダイエーに置いてあるのはそれなりの味で父の満足するものではない。そういうわけでたまに百貨店の中で和菓子の置いてある一角を歩くと、「宿木」がないか探している。あれば買って帰ろうと思って。
 
 「あんまり甘いモン食べ過ぎたら糖尿病になるで」

と言うと父は答えた。

 「その前にお迎えが来るから心配ないわ」

父はこの春、77歳になった。