江草乗の「大人の物欲写真日記」

江草乗のプライベートな日常日記です。

君住む街へ(その2)

初めての方は必ずその1(12/17の日記)からお読みください。

 翌年の夏、私はそれまでのすべてを捨てて、新しい自分を見つけるために東欧への長い旅を企図した。尾崎豊の『17歳の地図』の中には「素敵な夢を忘れやしないよ」というフレ−ズがある。それを心の中で繰り返しながら、自分の心の中にわだかまっていたすべてのものに訣別するために、夏休みを全部あてた長い旅を決めた。
 その旅の前に私はMに長い手紙を書いた。
「もう君には電話もしない。手紙も書かない。でも最後に一度だけ逢って欲しい。」
 Mはその私の強引な要求を受け入れてくれた。東京で3日間一緒に過ごした。はじめてMは私を拒否しなかった。初めて彼女を抱いたときとは全然違った。「抱く」のでも「抱かれる」のでもなく「抱き合う」という表現がふさわしい、そんな濃密な時があった。

「センセイ、あせらなくてもいいよ。ゆっくり何度でも楽しみましょ。何度でも。ワタシがセンセイのこと、気持ちよくシ・タ・ゲ・ル・・・」

 その快楽の海に溺れながら私はふっと思った。

「Mがこんなかわいい女になれたのは、もしかしたらKの存在があったからではないのか。もしかしたらKは、自分の性の快楽を極限まで追究するためにMに、性の数々の技巧を教え込み、その結果Mは私がこれまでに知る誰とも比較できないほどの女になってしまったのではないのか。もしもMがKではなくて私を選んでいたら、私はMをこんないい女に磨きあげることができただろうか。」

 私が味わったのは、自分は到底Kには及ばないという深い敗北感だった。

(「君住む街へ」(その3)へ続く)