江草乗の「大人の物欲写真日記」

江草乗のプライベートな日常日記です。

夏の日(その1)

 1984年夏、私はオフコ−スの『夏の日』という曲をとても気に入って、通勤のクルマの中でいつも聴いていた。そして、その歌詞と全く同じような恋を奇しくも体験したのだった。

きみがぼくの名前を はじめて呼んだ夏の日 ぼくはきみを愛しはじめてた
 (『夏の日』・小田和正

 信州、諏訪湖ユ−スホステルでみんなから「別嬪さん」と呼ばれていた彼女Mは20歳の短大生だった。諏訪湖祭りの花火を見物した翌日、夜行列車で帰るMに私は「ぼくも今日帰るから、一緒にクルマに乗って帰れへん?」と誘う。絶対にクルマの中で襲ってこないような善良な人間と誤解されていたこともあり、Mは無警戒で私の誘いに応じてくれた。すでに買っていた寝台券は払い戻し、Mは私の助手席で夜通し過ごすことになる。私は当然の質問をした。

「つき合っている人はいるの?」
「いるけど、彼とはもう別れるつもり。だって結婚できないから。」

なぜそのようなことをMが語ったのかは永遠の謎である。それは暗に私を誘っていたのだととれないこともない。「別れるからわたしはフリ−よ。」だったのか。

大阪に戻ってから私は、諏訪で一緒に写した写真を同封し、手紙を書いた。約10日後、帰省先から京都に戻ってきたMは私の部屋に電話をしてきた。8月30日朝に堀川丸太町で待ち合わせの約束をした。待ち合わせ場所に現れたMは、諏訪で逢ったときよりもはるかに「別嬪さん」だった。母の手作りという地味なワンピ−スを着て、お化粧も口紅程度なのに、匂い立つような魅力を全身から発散させていたのだ。私はその瞬間にまぎれもなく恋に落ちていた。

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