ハードボイルドな日々
「野獣死すべし」という大藪春彦の作品をとても気に入っていた。最初に読んだのは高校生の頃だ。本文の中の気に入ったフレーズには線を引いていて、その文庫本は何度も読み返したのでかなり傷んでいた。
作品の主人公である伊達邦彦はこのように語る。
>「美しい女と金のある女にしか興味がない。女に心を求めるような馬鹿には死んでもなりたくない」
恋愛至上主義だった高校生の頃の自分の対極にいたのがこの伊達邦彦というダーティヒーローだった。
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- 作者: 大薮春彦
- 出版社/メーカー: 光文社
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- メディア: 文庫
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角川映画では松田優作がこの伊達邦彦を演じたが、どうも自分の思い描いていたイメージとは違った。小説があまりにもすばらしいとき、誰が演じても違和感が生じるのである。
自分は伊達邦彦のような冷酷な殺人者になどならず、田舎教師になって長い月日を南河内の片隅で過ごした。もちろん伊達邦彦なんて人格はフィクションだから当然のことなんだが、強くてタフな伊達邦彦はずっと自分の心の中のあこがれの存在であり続けたのである。
伊達邦彦にはなれなかったが、せめて、スポーツカーを颯爽と乗り回すようなオッサンにはなりたいと思っている。
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