江草乗の「大人の物欲写真日記」

江草乗のプライベートな日常日記です。

ゴキブリの悲劇 

 それは深夜の出来事だった。私はトイレに行ってスリッパをはいたとき、足の裏になんだか変なものを踏みつけた感覚であわてて足を持ちあげた。そこには瀕死のゴキブリがいた。つまり、私は素足でゴキブリを踏んづけてしまったのである。なんと気色の悪いことだろうか。あわてて私は足とスリッパにくっついたゴキブリの体液をティッシュでぬぐった。そして、タイルの上でヒクヒクと断末魔の動きをしているゴキブリを、さらにスリッパで踏んづけてとどめをさしたつもりだった。しかし、そのままゴキブリの死体は放置していた。妻に私が遭遇した悲劇を話すために、その証拠である死体はその場所に必ず存在しないといけなかったのである。
 ベッドに戻った私は妻に向かってゴキブリを踏んづけた事件の一部始終を語った。妻は「そんなこと聞きたくない」という顔をしていたので、ますます私は調子に乗って、自分が踏んづけた時の足裏のぐにゅりとした感覚や、スリッパや足をティッシュでぬぐうときの気分の悪さについて語った。妻は「そんなスリッパ捨てる」と言った。たかだかゴキブリくらいで捨てなくてもいいだろう。もったいない。
 翌日、妻と買い物に出たときに私はゴキブリのことについて訊いてみた。妻が朝にトイレに行ったときに、そこに存在するゴキブリの死体を目撃するはずだからだ。「ゴキブリ死んでたやろ。ちゃんと捨てたか?」妻が見たとき、そのゴキブリはまだ生きていたそうである。なんという生命力だろうか。そのまだ動いてるゴキブリを妻はトイレットペーパーでつかみ、そのまま便器の中に捨てたそうである。なんと残酷なのだろうか。武士の情けとしてとどめを刺してやろうと踏んづけた私の行為と、まだ動いていたゴキブリを便器の中に投げ捨ててふん尿まみれにして流し去る妻の行為を比較した場合、後者の方がはるかに残酷である。私は妻から「流した」と言われて、なんだかそのゴキブリがかわいそうになったのである。

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