父と暮らせば49(伯母の通夜)
伯母が亡くなった。92歳である。10年くらい前から認知症になって長く入院していた。私は幼い頃この伯母にとてもお世話になった。今の学校に勤めるようになってからも、仕事帰りに何度も一人暮らししている伯母の家に寄ったこともある。
お通夜に出かける時に、父は「靴を買いたい」と言い出した。棺に一緒に入れるのだという。祖父が亡くなった時に父はまだ5歳、そして伯母は12歳だった。そのときに祖父は長女だった伯母に「弟や妹を頼む」と言い残したという。小学校を出たばかりの伯母は久保惣の紡績工場に働きに行った。伯母は一番下の妹を背負って小学校に通っていたのだという。その頃祖父が伯母のために赤い靴を買って、それを伯母が喜んでいたという幼い頃のことを父は覚えていて、そして兄弟姉妹の中で一番祖父の記憶があるのは伯母で、だから子どもの赤い靴を棺に入れてやりたいのだという。
それが80年も前のことであっても、父の心の中ではちゃんと生きている記憶なのだ。
靴屋で真っ赤な靴を探して買った。女の子用の靴はピンクは多いけど、真っ赤なものはなかなかなかった。
なんとか赤い運動靴を見つけてそれを買った。
通夜は親族だけのささやかな集まりだった。伯母の弟妹、そして子、孫たちが参列した。
そこで父は「次は自分の番だ」と言い、「元気やんか」と笑われていた。もちろん父の事情を知るのは参列者の中のごく一部だけである。
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