桜桃
お中元にさくらんぼが贈られてきた。さっそく食べまくる。
さくらんぼを食べるときは、いつもこの一節を思い浮かべる。太宰治の「桜桃」 である。
「いらっしゃい」
「飲もう。きょうはまた、ばかに綺麗(きれい)な縞(しま)を、……」
「わるくないでしょう? あなたの好(す)く縞だと思っていたの」
「きょうは、夫婦喧嘩でね、陰(いん)にこもってやりきれねえんだ。飲もう。今夜は泊るぜ。だんぜん泊る」
子供より親が大事、と思いたい。子供よりも、その親のほうが弱いのだ。
桜桃が出た。
私の家では、子供たちに、ぜいたくなものを食べさせない。子供たちは、桜桃など、見た事も無いかもしれない。食べさせたら、よろこぶだろう。父が持って帰ったら、よろこぶだろう。蔓(つる)を糸でつないで、首にかけると、桜桃は、珊瑚(さんご)の首飾りのように見えるだろう。
しかし、父は、大皿に盛られた桜桃を、極めてまずそうに食べては種を吐(は)き、食べては種を吐き、食べては種を吐き、そうして心の中で虚勢みたいに呟く言葉は、子供よりも親が大事。
「子どもよりも親が大事」とつぶやきながら、じゃんじゃんと食べまくる。
至福の瞬間である。
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