江草乗の「大人の物欲写真日記」

江草乗のプライベートな日常日記です。

父と暮らせば7

 父は涙もろい。いや、涙もろいというのは正確な表現じゃないかも知れない。でも、テレビで悲しいドラマを見ているときは本当に泣く。77歳の男が、テレビの中のおはなしに心を奪われて泣く。NHKで放送した「大地の子」を見ていたとき、父は何度も泣いた。「これは本当にあった話や」「こんな子供がよーさんおったんや」やっとのことで、日本人の父親が中国に残した娘と再会できたとき、娘はもう死んだ直後だった。「なんでもっと早く見つけてくれなかったんですか」父の涙は頬を伝って床に落ちた。
 そんな父は、実は映画の善し悪しに関してかなりシビアでもある。わざわざDVDを借りて見せて上げた「北の零年」は「小説の方がずっとよかった」だし。くだらない映画の時はやっぱり寝てしまう。ところが、地味な映画でもいいと思った作品は「これはいい映画だ」と答える。中国映画の「初恋の来た道」を観たときも、父は「こんな映画は日本人には絶対に作れない」としきりに誉めていた。チャンイーモウ監督の映画はかなり気に入ったようだった。「活きる」という邦題の作品も最後まで熱心に観ていた。韓国映画8月のクリスマス」を観たときは「まるで小津安二郎の映画を観ているようだった」と父は答えた。
 父が若い頃に観た映画の中で、今でも一番心に残る作品はいったい何なのだろうか。