江草乗の「大人の物欲写真日記」

江草乗のプライベートな日常日記です。

父の生まれ育った家

 クルマで40分も走れば、そこには父の生まれた家がある。自分が小学生くらいの頃、そこで何週間も過ごしたことを思い出す。昔はどの家も斜面にみかんを植えていたが、今は商売にならないせいか放置されていて、荒れ果てているところも多い。
 こんなところでのんびりネット取引なんかして過ごすのもいいだろうなと思うけど、考えたらまだそんな田舎までブロードバンドはやってこない。ガスはプロパンだし、ドコモの電波も時々とぎれる。周囲はうっそうとした森や竹林に囲まれる。
 庭にエノキの木が一本あって、父はその木を見上げていた。「玉虫はこの木にだけくるんや」確かに待っていると玉虫がやってくる。メタリックグリーンに輝く羽を光らせて。77歳になる父がその木で玉虫を捕ったのは、おそらく70年は前のことなんだろう。
 「この年になると同級生もかなり死んでしまってるしなあ」と父は嘆く。そうして人は次の世代にバトンを渡して行くが、木々はそのままである。庭にはいったいいつから生えてるのか分からない古い松の木がある。父が子供の頃もそのままだったらしい。おそらく100年経っても、この家はこのまま木々に埋もれたままここにあるのだろうか。そして自分の子供や孫がここに遊びに来るのだろうか。