江草乗の「大人の物欲写真日記」

江草乗のプライベートな日常日記です。

 3月も半ばというのに寒波がやってきた。大阪や京都には雪が降った。道路は一部凍結していた。おかげで道路は大混乱していた。これが今年最後の寒波なのか、それともまだもう一段攻めてくるのかはわからない。「春の雪」というと、私が好きな三島由紀夫の小説「豊饒の海四部作」の第一作である。あの作品を理解するためには古典文学の知識が不可欠だ。「春の雪」のヒロインである聡子を深く理解するためには、源氏物語の「浮舟」に関しての知識が必要となる。四部作が完結する「天人五衰」でもう一度登場する聡子の言動に関して思った疑問は、後に源氏物語を読んだときにはじめて氷解した。文学作品にはそうした「謎解き」の面白さがあるし、謎解きをするためには幅広い読書体験が必要となってくる。知らないときわめて浅い読み方しかできない。
 大学の3回生の時だったけ、演習で萩原朔太郎の詩を読んだ。「旅上」という題名の詩に関して私は「これは英語の on a journey の直訳じゃないか?」と私が直感で答えたときに、教官がかなり呆れていたことを思い出す。私にしてみればそんなこと誰でも思いつくだろうと思っていたのだが、必ずしもそうではなかったらしい。「朔太郎が使った教科書にそのフレーズがあるとか、そうした根拠がない限りそんなことは断言できない」確かにそうだ。しかし、そうして出典がわかったところでそれがどうしたと言うんだ。そもそも詩の鑑賞にそんな実証的手法を持ち込んでどうするんだ。好きなモノは好きだし、いいものはいい。文学作品はしょせんそんなもんだ。そんないいかげんな性格だから私は研究者として生きることを辞めたのかも知れないが。文学なんてゼニにならないことよりも、この世は金儲けの方がはるかに面白い。