まちがった受験勉強のやり方
（写真はある日の私の昼食→）
ルーズリーフの用紙に一生懸命英単語を書いている生徒が居た。purpose purpose purpose purpose 目的 というふうにである。こんな単語も知らないのかと私は思ったが、その一枚には他にもたくさんの単語が同様に書いてあった。
私は自分が中学２年の時に習った英語の教師を思い出した。彼女は新しい単語が出てくるとノートに２０回ずつ書かせるという宿題を出したのである。私はふまじめな生徒だったのでそんな馬鹿馬鹿しい宿題はしたくなかった。それでわざとしなかった。そのために立たされた。そのときに私は「こんな低レベルのやり方にはついていけません。そんなことしなくても覚えられます！」と言った。その女教師は「英語は手で覚える」というのが持論だった。私は「あほか！脳は頭にあるんじゃ。おまえは爬虫類か！」と心の中で思っていた。
世の中には、そういう方法でしか英単語を覚えられない生徒もたくさんいるのである。そして時間が経つとすぐに忘れるのだ。
私はそのpurposeを書いていた生徒に向かっていった。「これまでの英語の勉強が足りなかったから今単語力がちっともついてない。それを焦って覚えようとしているきみの気持ちはわかる。でもそのやり方は間違っている。そういうふうに覚えてもすぐに忘れるから時間の無駄なんだよ。」と。
「今必要なのは、長文の中にわからない単語が出てきても、前後の文章からその意味を類推して全体の文意を把握できる能力なんだ。実際の入試の時にわからない単語がひとつもないなんてことはないだろう」
前に勤務していた公立高校に「単語命」という英語教師が居た。彼はよく英単語テストをして、その成績を教室の後ろに張り出したりしていたが、ろくに予習させていなかった。だから生徒の英語力は惨澹たるものだったし、自らの誤りにも気付いていなかった。生徒たちはその単語テストの勉強をおおむね他の授業の時間に内職で済ませていた。そして試験が終了した瞬間に覚えた単語を記憶から消去していた。そんなやり方が実を結ぶわけがなかった。
これも公立高校にいたときの話だが、「試験に出る英単語」という当時ベストセラーになった参考書があって、ある生徒が「先生、半年かけてこの本の単語全部覚えましたよ！」と嬉しそうに語った。彼は受験した大学すべてに不合格だった。半年も時間があったのに。そんな薄い参考書一冊しかできていないその勉強量の少なさを思えば当然の結果だった。
私は「英単語を覚える」という勉強を意識してやったことはない。高校３年の夏まで、自分の英語の勉強はただ膨大な量の文章を辞書を使って読み、辞書にはマーカーで印をつけ、ぼろぼろになるまで辞書を引きまくり、大量の英文を来る日も来る日も読み、ときどき息抜きのように文法問題や正誤問題をやった。のちに教育大付属の高校に転勤したある英語教師が私に向かって「きみの性格なら正誤問題をたくさんやれば文法力がつくよ」と言われ、そのアドバイス通りに正誤問題をやりまくった。そのうち、パターンを覚え尽くしてしまったのか知ってる問題にしか出逢わなくなった。
高校３年の秋、みんなが持ってる「シケタン」（試験に出る英単語）を自分も買ってみたが、そこに載ってるのは自分の知ってる単語ばかりで「なーんだ」と自分は失望した。いつしか自分はそのレベルを超えていたのだった。
単純な暗記に頼るのではなく、考えることが大事だ。考えて考えて考えて、その後で辞書を引いてみる。そのときに自分の想像した意味通りならば「うっひょ〜」と思うのである。
私の古典の授業が終わってからある生徒が「先生、全然古典の点数がとれないのですけどどうしたらいいのですか？」と質問してきた。私は訊き返した。「これまでにどんなふうに古典の勉強をしたのか」「ほとんどやっていません」 「あほか！それで点数がとれるわけないやろ、やってから出直してこい！」
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