大爆発寸前

　朝、運転中に激しい腹痛に襲われた。うぐっ・・・　しかし、すぐに痛みは治まった。どうやらこの痛みは、大腸の中である物体が暴れてることによって発生する類のものらしい。ということは、痛みはおそらく間歇的に襲ってくるだろうし、第一波よりも第二波、第二波よりも第三波の方がはるかに激烈なものとなることは確実だ。オレは運転しながら入ることのできるトイレを考えた。クルマは長居の踏切をこえたあたりを走行していた。目的地まではあと２０分はかかる。果たしてあと２０分耐えることができるだろうか。
　第二波の攻撃が襲ってきた。意識が一瞬遠くなる。必死で気合いをいれる。このまま暴発してしまえば、私はクルマのシートとスーツを汚した日本一みじめな男になってしまう。そしてシートに染みこんだ臭気はおそらく廃車にするまでずっと私を悩ませるだろう。どんなことがあってもこの攻撃に屈してはならないのだ。
　天王寺のバイパスを渡る。あと１０分ほどだ。なんとかがんばらないと。
　少しでも早く目的地に着くために私は加速した。信号を危ういタイミングで無理に渡り、一気に突っ走った。
　駐車場にクルマを停める。一瞬の早業でぴたっと止めて、そのままカバンを持って最も近いトイレに駆け込む。洋式便座のある個室に入って私は安堵のため息をつく。ふう。これでもう大丈夫だ。静かにズボンを膝までずらして、便器に腰をおろした。危機一髪だった。