江草乗の「大人の物欲写真日記」

江草乗のプライベートな日常日記です。

父と暮らせば21

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 父が倒れた。
 朝、私が出勤するときはすでに卸売市場に行ってるはずの父が、なぜかベッドの上にいた。ベッドでうつぶせになっていた。私は声を掛けたが、返事がない。「父ちゃん、父ちゃん」と背中をさすりながら声を掛けたのだが、呼吸が苦しいのか息苦しそうにしている。しかも手が冷たいのだ。「しばらくじっとしてるとおさまるから」と言うが、尋常じゃない。妻があわてて119番に電話した。救急車が到着するまでの時間がやたら長く感じられた。救急車には妻が乗り込んで付き添ってくれた。父はついていこうとする私を手で制した。私は父が以前に語っていたことを思いだした。
「オレが死んでもおまえは休まんでええ。葬式よりも学校の方が大事や。オレは誰にも迷惑はかけん。その時が来れば自分の足で焼き場まで行って焼いてもらう」
 そうして父は搬送されていった。
 搬送先の病院にはたまたま私の知人の医師がいたので、メールで連絡をとった。すると詳しい病状を教えてくれた。心筋梗塞で中程度の病状らしい。低体温の理由は心臓が血液を送れなくなっていたからだったのか。
 とりあえず学校に出勤したものの、父のことが気になって上の空だった。妻からのメールばかりを気にしていた。とりあえず入院に必要なものは妻がいったん家に戻って用意してくれた。仕事を終えてから私は病院に立ち寄った。まだ父はICUに入ったままだったが、ちゃんと話が出来るようになっていて落ち着いていた。すぐに妹夫婦も来た。父は私たちに向かって「おまえらも忙しいんやから早く帰れよ」と言った。そして「寝てるのも疲れるんや」と。
 最近の父は家にいるときはいつも本を読んでいた。図書館で借りてきた本をいつも読んでいて、枕元には数冊の本がいつも積まれていた。「本もテレビもないし、退屈やなあ」と私が言うと、「これまでに読んだ本のことをゆっくり思い出すわ」と父は言った。病院のベッドの上で、身動きできない状態でも、表情はとても穏やかだった。

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