夏の日(その9)
初めての方は必ずその1(12/17の日記)からお読みください。
信州・諏訪湖ユースホステルでその夏知り合った人たちのオフ(宴会)が大阪・千日前であった。私もMもその宴会に参加することになっていた。少し早い時間に梅田で待ち合わせた私たちは、少しデートを楽しんでから集合場所に向かうことにした。私はMを伴って、ある百貨店に出かけた。なぜそこに行きたかったかというと、その売場には、6年前、高校2年の時に愛を告白しかけた私を冷たく拒絶したもと同級生が勤務していたからである。「今度、結婚するんだ。」と言って、その女性に自分が連れているMを見せびらかすというのが私のくだらない企みだった。
全く私という人間は下司野郎だった。(今でもそうである。)
Mは私のこの話にすぐに乗ってきた。「おもしろーい! 協力するよ。」さっそくMは私に腕をからませ、くっついて歩いてくれた。
売場に私を振ったY子は、ちゃーんといた。目があった。「あの人?」小声でMは訊ね、私は「うん」と頷いた。Mは早足でまっすぐに近づいていった。
「Y子さんですか。はじめまして。わたし江草さんの婚約者のMでーす。」
その時のY子の驚愕の表情は、思い出すたびに笑える。Y子だって決してぶさいくというわけではなかった。かなりの美女である。しかし、Mと比べるのはあまりにも酷であった。自分がふった男が、自分よりもはるかにいい女を連れている光景は、女性の目にはどのように映るのであろうか。それとも「そんな男であなた満足?」と同情して見るのだろうか。
宴会が終わった後、遠距離からの参加者もあり、親と同居して広い家に住む私の所には、男4人女4人が泊まることとなった。ナンバから約40分で私の家に移動が完了し、さらに2次会となった。もちろんそのメンバーの中にはMも入っていた。翌日が日曜日ということもあり、深夜まで盛り上がり、近所から苦情が出るほどだった。そして、宿泊した連中は翌日「遊園地に行こう!」と盛り上がっていたが「保育所の実習の準備があるから」という口実で、Mは逃亡し、あとで私とこっそりと落ち合って2人きりとなった。
ついに私はMを自分の部屋に連れ込んだのである。
(〜その10に続く)